原図の所蔵者・根岸信輔(友山)について
根岸信輔(友山)については、生家のあった現在の埼玉県熊谷市冑山にある“根岸友山・武香(たけか)顕彰会”に、根岸家の歴史と共に関係資料が保管継承されており、旧根岸家長屋門が埼玉県熊谷市教育委員会によって復元保存され、熊谷市指定文化財になっています。
根岸信輔(友山) 文化6年(1809)〜明治23年(1890)
武蔵国大里郡冑山の豪農・根岸信保の長男に生まれる。
16歳で家督相続し、冑山村名主就任。村政のかたわら近隣村との治水事業に尽力。
寺門静軒、千葉周作などに文武を学び、地元に学問私塾「三餘堂」、武術道場「振武所」を開設。
文久3年(1863)の浪士隊募集に門人多数と入隊して上洛し(54歳頃)、創設期の新選組に加わるが、幹部の粛清などに反意して江戸に戻る。
江戸帰還後も尊皇攘夷の士として活動を続け、「吐血論」を著す(慶応3年)。
明治新政府後も、廃藩置県に関する建白書や、関東の治水事業に関する「治水表」を提言している。
明治21年・漢詩集「田園雑興」を出版。
明治23年没(81才)。
|
|
冑山文庫について
尾張屋版・江戸切絵図28図が入っていた国会図書館所蔵・冑山文庫は、根岸信輔(友山)と二男・武香(たけか、貴族院議員、国学者、考古学者 1839-1902)の蔵書を合わせて、武香が亡くなったのち遺族によって昭和9年(1934)に上野帝國図書館に寄贈され、信輔の郷里の村名を冠した冑山文庫として保管された蔵書郡でした。
帝国図書館は、昭和24年(1949)に設立した国立国会図書館に統合されてます。国会図書館のリサーチナビでは寄贈年は昭和6年(印は9年)となっています。
根岸家から寄贈された書籍の総数は約950点(国会図書館リサーチナビ)。多岐にわたる学問書・趣味書に混じって各種江戸大絵図や地理書とともに「江戸切絵図 28図」が入っていました。
以上から、弊社が復刻した江戸切絵図の内の28図は、幕末〜明治の動乱期を豪農の名主を勤めながら尊皇の士として生き、新選組創設にもかかわった人物が生前(30〜50才代?)に購入したものであり、後、遺族によって帝国図書館に寄贈され、今日まで国会図書館に保管されていた尾張屋版・江戸切絵図といえると思います。
|